研究概要

本研究室では, 細胞から個体までの生命現象を理解する研究を行っています.
具体的なテーマは下記のようなものがあり, それぞれの学生が興味を持った対象を研究しています.

微細加工技術を用いた細胞の活動計測

生体システムは, 情報の分散表現とその並列処理に特徴があります. 本研究室では, 電極アレイ法(*)と呼ばれる手法を用いて, 情報処理・病理・治療メカニズムの解明を目指しています.
(*)電極アレイ(MEA: Microelectrode Arrays)法:微細加工技術を用いて多数の電極を配置したシャーレの上に細胞を育て, 細胞の活動を長期間に渡って同時多点計測・刺激可能な手法

mea 電極アレイ
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左: カルシウムイメージング 右: 電気計測

幹細胞を用いた再生医療

パーキンソン病・アルツハイマー病・脳卒中といった神経変性・神経細胞死を伴う疾患に対して, 喪失した神経機能を回復させることを目的とした再生医療技術の実用化が期待されています.そこで本研究室では微細加工技術を用いて, 移植部位における幹細胞(*)由来の神経細胞と生体由来の神経細胞間の機能的結合の長期的な評価を行なっています.

1) Shimba K., Sakai K., Takayama Y., Kotani K., Jimbo Y., Recording axonal conduction to evaluation the integration of pluripotent cell-derived neurons into a neuronal network, Biomedical Microdevices, Vol. 17, Article 94, 2015
2) Takayama Y., Moriguchi H., Kotani K., Suzuki T., Mabuchi K., Jimbo Y., Network-wide integration of stem cell-derived neurons and mouse cortical neurons using microfabricated co-culture devices, Biosystems, Vol. 107, pp. 1-8, 2012

榛葉さん図
結合評価用デバイス
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左: 幹細胞由来神経細胞 右: 生体由来神経細胞

迷走神経刺激法の作用メカニズムの解明

てんかんは, 大脳皮質神経細胞の過剰な同期発火によって反復性の発作が引き起こされる慢性疾患で, 発作によって不随意運動(痙攣), 意識障害を伴う重篤な病気です. 罹患者の約30%は抗てんかん薬を服用しても症状が改善されない難治性てんかんを患っています. 近年, その難治性てんかんに対する治療として、迷走神経刺激法 (Vagus nerve stimulation: VNS) が注目されています. しかし, 迷走神経刺激作用のメカニズムは未知な部分が多く, 患者さんに対する刺激効果の予測は困難であり, 最適な電気刺激方法も未だ確立されていません. そこで本研究室では, 微細加工技術を用いて, VNSの作用メカニズムの解明を目指し, 刺激効果の予測・効果的な刺激法の確立を目指しています.

VNS
迷走神経刺激に関係する神経部位の再構築

 

自律神経-心筋・再生心筋系の活動理解

心拍リズムの制御には心臓内の刺激伝導系だけでなく自律神経系が深く関与しています.そこで本研究室では,心筋拍動の自律神経性調節機構の解明,さ らには不整脈治療など医療応用を想定して,交感神経-心筋細胞の共培養系をマイクロデバイス上で確立し,神経系を含む現象を細胞レベルで観測・評価してい ます.具体的には(1)自律神経系による心臓拍動リズム調節現象,(2)幹細胞由来心筋系に対する自律神経系の機能的支配に関して,マイクロデバイスを駆 使して形態観察と電気生理計測データ取得を行っています.これらの試みにより自律神経系に起因する不整脈発生機序の理解,幹細胞を用いた再生治療の実現に 向けた評価技術としての確立を目指しています.

1) Takeuchi A., Shimba K., Mori M., Takayama Y., Moriguchi H., Kotani K., Lee J., Noshiro M., Jimbo Y., Sympathetic neurons modulate the beat rate of pluripotent cell-derived cardiomyocytes in vitro, Integrative Biology, Vol. 4, pp. 1532-1539, 2012
2) Takeuchi A., Nakafutami S., Tani H., Mori M., Takayama Y., Moriguchi H., Kotani K., Miwa K., Lee J., Noshiro M., Jimbo Y., Device for co-culture of sympathetic neurons and cardiomyocytes using micro- fabrication, Lab on a Chip, Vol. 11, pp. 2268-2275, 2011

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自律神経‐心筋細胞共培養系

磁気刺激の影響評価

中枢神経系に対する磁気刺激は, 古くから多くの医療現場で利用されています. 近年では反復経頭蓋磁気刺激を用いた脳・神経疾患の治療やリハビリテーションが積極的に行われるようになり, 重篤な神経疾患治療に対する磁気刺激の応用が期待されています. しかし, 磁気刺激が神経回路網の活動を変調する作用メカニズムについては現在でもその多くが不明であり, 治療における刺激による作用(副作用も含む)が明確ではありません. そこで, 本研究室では培養神経回路網に対して磁気刺激を行い, 影響を評価することによって, そのメカニズムを明らかにしようとしています.

1) Saito A., Takayama Y., Moriguchi H., Kotani K., Jimbo Y., Induced current-pharmacological split stimulation system for neuronal networks, IEEE Transactions on Biomedical Engineering, Vol. 61, pp. 463-472, 2014
2) Saito A., Takayama Y., Moriguchi H., Kotani K., Jimbo Y., Effects of Extremely Low Frequency Magnetic Fields on Neuronal Development of P19 Embryonal Carcinoma Cells, IEEJ Transactions on Electrical and Electronic Engineering, Vol. 6, pp. 157-162, 2011

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磁気刺激システム

生命現象の動作原理を数理的に解明

私たちの体の中では, 数多くの細胞が協同して活動することで複雑な処理や制御を可能にしています. そのメカニズムを明らかにするには,最新の数学や物理学の理論を用いること, またさらに発展させることが必要になります. 生命現象のミクロな構造とマクロな機能との関係を数理的に読み解きます.この研究は科学技術振興機構「戦略的創造研究推進事業」の支援を受けて行なっています.

1) K. Kotani, I. Yamaguchi, Y. Ogawa, Y. Jimbo, H. Nakao, and G. Bard Ermentrout, Adjoint Method Provides Phase Response Functions for Delay-Induced Oscillations, Physical Review Letters Vol. 109, 044101, 2012
2) I. Yamaguchi,Y. Ogawa, Y. Jimbo H. Nakao, K. Kotani, Reduction Theories Elucidate the Origins of Complex Biological Rhythms Generated by Interacting Delay-Induced Oscillations, PLoS ONE, Vol. 6, No. 11, e26497, 2011

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脳神経活動を数理モデルから再現・予測

脳の複雑な機能・ダイナミクスを明らかにするには, 数理モデルを用いたアプローチが不可欠となります. 本研究室では脳活動を再現する数理モデルを構築し, 数学理論を用いた解析を通して, 実験結果の再現や予測を行なっています.

1) Kotani K., Yamaguchi I., Yoshida L., Jimbo Y., Ermentrout G. B., Population dynamics of the modified theta model: macroscopic phase reduction and bifurcation analysis link microscopic neuronal interactions to macroscopic gamma oscillation, Journal of the Royal Society of Interface, Vol. 11, 20140058, 2014

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脳活動の数理モデル

脳波計・NIRSを用いた脳内の情報処理の解明

脳神経活動の様子を脳波計やNIRS (Near Infra-Red Spectoroscopy: 近赤外分光法) ,fMRI (functional magnetic resonance imaging)を使用することで, 非侵襲的に測定することができます. これらの測定信号は複雑な脳の活動を反映して変動しています. そこで記憶や計算の過程で起こる脳活動の変化を評価し, 実験から情報処理に伴う脳活動の様子を明らかにします.

1) Ogawa Y., Kotani K., Jimbo Y., Relationship between working memory performance and neural activation measured using near-infrared spectroscopy, Brain and Behavior, Vol. 4, pp. 544-551, 2014

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脳活動計測の様子

 

自律神経を通じた循環器の調節機構解明

心臓や血管といった循環器は自律神経の調節を受け, 体内の各部に必要な量の血液や酸素を運搬し続けており, この機構が滞ると重篤な疾患を引き起こしてしまいます. そこで本研究室では, 循環器を制御している自律神経の活動を測定・解析し, 病気やリハビリテーションに役立てる研究を行なっています. また工学技術を積極的に活用することで従来困難であった計測・刺激を可能とし, より詳細に循環器調節機構を明らかにするための研究も行なっています.

1) Numata T., Kotani K., Jimbo Y., Effect of body motion to respiratory sinus arrhythmia with different timings of respiration, International Journal of Bioelectromagnetism, Vol. 15, pp. 47-53, 2013
2) Kotani K., Takamasu K., Jimbo Y., Yamamoto Y., Postural-induced phase shift of respiratory sinus arrhythmia and blood pressure variations – insight from respiratory-phase domain analysis. American Journal of Physiology, Heart and Circulatory Physiology, Vol. 294, H1481-H1489, 2008

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左: 循環器計測の様子 右: 超音波検査ロボット

 

多感覚拡張現実感技術を用いた新しいBrain-computer-interface

脳活動から使用者の意思を読み取る装置はBrain-computer-interfaceと呼ばれ,福祉やリハビリテーションにおける重要な技術となっております.本研究室では,利用者に複数感覚での拡張現実感を提示するシステムを構築し,脳と外部環境のインタラクションを高速化・最適化します.この研究は総務省「戦略的情報通信研究開発推進制度」の支援を受けて行なっております.

1) Naito G., Yoshida L., Numata T., Ogawa Y., Kotani K., Jimbo Y., Simultaneous Classification of Multiple Motor Imagery and P300 for Increase in Output Information of Brain-Computer Interface, Electronics and Communications in Japan, Vol. 98,  pp. 47-54, 2015

新しいBrain-computer interface技術の開発

実生活を豊かにする生体信号解析・支援技術の開発

生体信号をリアルタイムに解析し, 実生活環境下での様々な支援を実現する研究を行なっています. 最先端の計測手法・解析技術を用いて, 生体信号をリアルタイムに読み解き, さらに得られた情報を使用者にフィードバックすることで, 作業を補助するシステムや映像が生体情報とインタラクティブに動くシステムを構築します.

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実生活環境下での知的作業支援

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